::::::「視線の先」:::::::



 腕の中に収まってしまう、小柄な体。
 ぎゅっと力を込めると温かくて。
 思わず、ふわふわの髪に鼻を擦り付ける。

 こうして、抱き合って眠るのが心地良い。
 とても安心して、自然と喉が鳴る。

「…なんだよ」

 腕の中から窮屈そうに顔を上げ、コノエが呟いた。

 なんだ、と言われても…。
 ただ、ぎゅっとしたかっただけだ。

 そして、改めて、アサトは思う。

「──コノエは小さい」

「……!」

 途端、ムッとしたようだった。

 何故だかは解らない。

 解らないが、思った事はそれだけではないので、続ける。

「小さいけど…強い」

 すると、今度は複雑そうに、中途半端に耳を振った。

「…おまえの方が…強いだろ」

 それから小さな声で、眼を逸らして口にする。
 その様子は、少し不貞腐れているようにも見えた。

「違う。コノエは強い。──まっすぐ、俺を見る」
「それは…」

 今まで、そんな猫はいなかった。
 侮蔑か、恐怖の眼。
 その、どちらでもない、コノエの眼。

「嬉しい」

 素直な感想を声に出し、アサトは再び、腕に力を込めた。
 ぎゅっと、でも、押し潰さないように丁寧に。

「お前は…」

 と、顎の下から、呆れたような声がした。
 見下ろすと、不自然な方向に視線を向けていた。

 ──最近わかった。

 これは、照れている、らしい。

 それも無性に嬉しくて、アサトはコノエの耳に口付けた。
 軽く食んで、毛並みに沿って舐め上げる。
 そうすると、コノエも喉を鳴らし始めるのだ。


 強いけれど、こうして腕の中で大切に、大切に守りたい。


 だいじな、たからもの──。




                       (終)


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アサト視点でも見てみたいなぁと思い。
…って、ただのコノエたん大好き文にしかならない!?(笑)