:::::*** 「…を 前提に。」 ***:::::
明かりの灯った部屋に帰る。
以前は想像もしなかったし、欲したこともなかった。
あいつのことだから、アキラの帰る時間を見計らって鍵を開けているだろう。
アキラの方が遅く帰る時はいつもそうだ。
そのクセ、同じことをしようとすると、「危ないからダメ」と言うのだ。
まったく、意味が解らない。けれど、まぁいいか…と放っておいている。
案の定、ノブを回すだけで簡単にドアが開いた。
そして、
「おかえり、アキラ」
タイミングを見計らったようなケイスケの声。
これも、いつもの事だ。
初めは落ち着かなかったが、いつの間にかそれが日常になっている。
「あぁ…」
素っ気無くもちゃんと返事をして、アキラは部屋に踏み入れる。と。
「………?」
先に帰ったほうが夕飯の支度をする。
と言っても、向き不向きはあるのもで、圧倒的にケイスケの仕事になることが多い。
二人で暮らすようになってから、冷たい固形食も減った。
それが、今日は…。
「なんだ、それは…」
二人暮らしには十分な小さなテーブルの上に、いつも通り、料理の乗った皿がある。
が、テーブルの中心には、陣取るように大きなケーキが置かれていた。
そんなことは初めてで、アキラは怪訝な顔をした。
「…やっぱり、覚えてないか」
テーブルを挟んで向かい合うように腰を下ろすと、ケイスケはそう言って少し照れたように頭を掻いた。
覚えていないと言われても本当に心当たりがないので、更に訊く。
「…なにが」
「こうやってアキラと一緒に暮らすようになって、今日で1年なんだよ?」
アキラがそういう事に頓着しないのを解っているケイスケは、素直に口にした。
「…………そう、なのか…」
全く、気に留めてもいなかった。
トシマを抜け出して、内戦の混乱から、今ようやく落ち着いた頃だと思っていた。
言われてみればここへ来たのは、こんな季節だったような気もする。
だが、アキラにとっては慣れない仕事もあり、周りを見ている余裕はなかった。
改めて言われると不思議な感じだ。
「…もう、そんなに経ってたんだな」
道理で、仕事の失敗も「減ってきた」はずだ。そんなことを思っていると。
「あ、…そっか…。アキラにとっては『もう』なんだ…」
「……?」
「いや、ええと…俺にとっては、『まだ』1年…だったから…」
「まだ?」
時々、やはりケイスケは意味の解らないことを言う。
「これから、ずっと…アキラと一緒にいるつもりだったから。それを考えたら、1年なんてまだまだかなって」
「あぁ…」
そういうこと、か。それなら。
「お前こそ、『まだ』なのか?」
「え?」
「俺は…たぶん、この生活が自然に過ぎてたから、気付いたら1年経ってたんだと思う」
「あっ…」
「どっちでも同じだろう? それとも、長かったのか?」
「違う、そうじゃなくて、その…! なんていうか、幸せで…さ。これが、ずっと続くといいな…って」
そう言って、本当に幸せそうに笑う。
気恥ずかしくて、アキラは視線を逸らして「あぁ」と小さく答えた。
アキラの見えない所で、ケイスケはまた満足そうに微笑んでいるだろう。
と、ふと思い出したようにケイスケが口を開いた。
「そうだ、なんだかバタバタしてて…言ってなかったんだよね」
「?」
改めて切り出されるとアキラも気になり、顔を上げる。
「あのっ、アキラ…!」
と、やたらと力いっぱいケイスケが背筋を伸ばして見詰めていた。
「なんだよ…」
妙な気迫に少々驚きながら、先を促す。
「俺がんばってアキラを助けるし…あ、助けられる方が多いかもしれないけど…だけど!」
そこで一度言葉を切って、目を瞑ったケイスケが頭を下げた。
「これからも、ずっと…一緒にいてくださいっ」
「…ケイスケ?」
何を改まって…と思うが、本人は至って本気のようだった。
すると、意図が伝わっていないのを感じたのが、ケイスケは顔を上げて言い訳のように呟いた。
「あ…あの、その…プ…プロポーズって…やつが…ええと…」
「…………っ」
なんだか解らないが、無性に恥ずかしくなって、アキラはテーブルの下でケイスケの足を蹴った。
「…った、…なんで、アキラ…!」
「おまえ、そんな事わざわざ…っ」
その言葉は知っている。一般常識として。
けれど、まさか自分がされる立場になるとは思いもしない。
ましてや、一緒に暮らしているとはいえ、男同士で…。
でも、ケイスケなら律儀にそういうことを気にするのかもしれない。
考えや行動が少し解ってきた。が、複雑だ。
「…も、しかして…照れてる…?」
「うるさい」
アキラはどういう反応をしていいのか判らずに、フイっと横を向く。
しかし、それでも引き下がらないのが、ケイスケだった。
「…………それで、…アキラ、…返事は…?」
「…聞かなくても解ってるだろ?」
小さく溜め息をついて、アキラは渋々といった様子で口にする。
「うん…。イヤだったらハッキリ言うってことは解ってるんだ。でも、…たまには言葉にして欲しいな…なんて」
まったく、さっきまで喜んでいたと思ったら今度は肩を落としたりと忙しい。
そんな姿を見せられているうちに、この頃はつい絆されるようになってしまった。
それだけ、ケイスケの存在が当たり前になっている。
「…そのうち、な」
「アキラ…」
「…ずっと、一緒に…いるんだろ?」
だから、そのうち。
一瞬にして満面の笑顔になったケイスケを見て、アキラはもう一度、テーブルの下で足を繰り出した。
(END)
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はーーーーーーーーーははははずかしィ……………;;;;;
おーわぁこいつらも恥ずかしいけど私が一番恥ずかしいよ…;;;;;
えr書くより甘いの書く方が恥ずかしいと思ってるヤツですよごめんなさい…orz
なんか、グンアキの甘い話ーって考えてた時に突然出て来たので書いてみたのでした…;
やっぱりグンアキとは全然違うよ…!(当たり前だ…)
※2006年とか…?