「 糧 出づる罪 」


 自分よりも一回りは小さいであろう子猫が、目の前で肩を震わす。

 今、彼の身は、どれだけの悲しみに囚われているだろう。

 この身に受けた悲哀より、
 もっと…
 ずっと、ずっと深く…。

 ただ静かに、
 無垢に流れ落ちる、
 透明な雫。

 その一粒さえ甘露に感じてしまうこの身が、
 罪なのだろうか。

 生きるために。
 その魂を食らう。

 自らの司る悲しみに堕ちた子猫。

 それは、少しばかりの優越感と、
 それから、
 同じ想いを共にしている…という、
 ほのかな温かさ。

 忘れかけていた、温度。

 もう取り戻せない熱が、
 冷たい感情を際出させる。

 そして、自覚した途端…

 更に深く、陥れていく。 



 絶望の、果てまで──。




 そうまでして、生きながらえるのだろうか。

 これが、素直な欲望…なのだろうか。


 疑念は晴れない。


 けれど…。




「…済まない…」

 小さく呟いて、カルツは震えるコノエの体を包み込む。

 この魂を貪ることを望んでいる。

 理性とは相反する欲望が、告げている。

 ほんの一時の慰めだとしても…。


「今…楽にしてやる…」


 そっと、
 涙の止まない双眸に片手を翳す。


 今、この感情の渦に引き摺り落としたのがカルツなら、
 また、救ってやれるのも彼以外にいない。


 悪魔に堕ち、
 魂を喰らい、
 更なる罪を背負って、

 それでも、
 この生を漂い続ける。



 優しく覆って瞼を閉ざしても。

 雫は止まなかった──





                    (終)

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カルコノ。(…カルコノ?)
なんかこう、アサトと会う前の段階なら心中的なEDあっても…とか思うのですが。
BL的にはやっぱりBADはエロでないと駄目なんですかね?(ぇ)

↑とても抽象的な文にしました。
なにか感じ取ってもらえたら嬉しい。