------「 コトバ 無くとも 」(アキラ編)------




 背中に庇って敵を斬る。
 もうすっかり身に付いてしまったスタイル。
 大振りの刀も手に馴染んでいる。
 敵を近寄らせない為にも、間合いの広い刃は重宝する。
 少しでも、この人から遠ざけておきたいから。
 自分以外のすべてを。


 労わりも。
 励ましも。
 言葉は
 何もない。

 けれど。


 すっと、掌が伸ばされる。
 温かく、頬に触れる。

「…俺は、ここにいるよ…」

 その掌を上から包み込み、
 アキラはそっと微笑んだ。


 この温かさがある限り────




                          (了)






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深い信頼が好き。














------「 コトバ 無くとも 」(シキ編)------




 波間に漂うよう。
 ゆったりと時間が流れている。

 遠くで聞こえる甲高い音。
 剣劇?
 悲鳴?
 …それは、遠い音。

 近くで聴こえるのは。

「シキ…」

 何を意味する言葉だかは解らない。
 ただ。
 ひどく安心する声。

 その声だけが。

 世界のすべて。



                          (了)






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意識もせず、あったかいといい。